昨日、夜の11時ごろに母から電話があった。
日本は朝で、母は起きたばかりだったみたい。
グズグズと泣いているような声で、「熱っぽいの」という。
「熱っぽいから、家にいったん帰りたい」って。
私が「風邪かねえ」というと、「そうかもね」と言う。
「健が私を連れて帰りたいんだと思うの、あの人はそういう人なのよ」。
弟は家の買い手を見つけた。
もうすぐ売るつもりだ。
家が売れたら、もう母は二度と帰れない。
家が売れたら、もう母は二度と帰れない。
「だけどさ、調子が悪いんだったら、家には帰らない方がいいよ。
今いるところの方が、何かあったらすぐ診てもらえるんだからさ」
なんて私はなだめすかす。
なんて私はなだめすかす。
そうね、ここに居た方がいいんでしょうね、
あの子の邪魔するつもりなんてないの。
と母は言う。
あの家の中で何不自由なく生きていけるようにしてここに来たのだから、
あの家の中で何不自由なく生きていけるようにしてここに来たのだから、
あの子はもうどうなったって大丈夫なのよ。
「私はあなたたちのために全部取っておいたの、何があっても困らないように」
偉かったでしょう、と母は得意げに言う。
「私はあなたたちのために全部取っておいたの、何があっても困らないように」
偉かったでしょう、と母は得意げに言う。
そういう物だって、全部捨てるのだ。
「頭が痛いの。朝からずっと。健が迎えにきてくれると思うんだけど」
スカイプの会話は電波が弱くなるとふっと切れる。
母の声が聞こえなくなり、私はかけ直さなかった。
その後、もう一度、今度は深夜の1:30頃に母からまた電話。
私はブログの手直しをしていて、起きていたので電話を取った。
声は晴々していて、朝ごはんを食べてきたのだという。
友だちになったお爺さんが、ベトナム人か何かの食事係にキレたという話。
「傑作だったわよ」と意地悪そうな声で言う。
「あんまりケンカしないでよ、あの人たちだって仕事でやっているんでしょ」
と言うと、
「違うわね。単に怠けているのよ。はっきり言ってやらないと覚えないからダメ」
「違うわね。単に怠けているのよ。はっきり言ってやらないと覚えないからダメ」
なんて、上から目線の偉そうなことを言う。
声が強くなっていて、ご飯を食べて元気になった感じ。
何でも、友だちのお爺さんのご飯が足りなくて、
自分のを分けようとしたらダメだと言われて、
でもお爺さんの分はなかったから、
お爺さんがキレたんだって。
何だかよく分からない話だが、母はがっつり自分のぶんを食べたらしいから良かった。
何だかよく分からない話だが、母はがっつり自分のぶんを食べたらしいから良かった。
「でもね、私は自分の分をわけてやらなかったの。
あげると怒られるのよ、自分で食べてくださいって。
だから、図々しいけど、自分で全部食べて知らんぷりしたの」
どう受け取ればいいか分からないこの逸話を、三度も繰り返す。
何でもそのお爺さんは、母のいる所より一階上の富裕層向けの部屋に住んでいるという。
おそらく大金持ちなんだけど、家族によって騙されて施設送りとなった。
でも特別だから、ケンカしても大丈夫なんだって。
でも特別だから、ケンカしても大丈夫なんだって。
「傑作だったわよ」
強そうな、優越感に満ちた声がもう一度言う。
メソメソされると、母が可哀そうで、どうにも切ない。
だからこんな風に意地悪で可愛くない事を言っているとほっとする。
私は一緒に意地悪そうな声で大笑いするのである。
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